スピリチャルでアートな日々、時々読書 NY編
スピリチャルでアートな日々、時々読書 NY編
Dia Beaconののどかな休日
2009年5月4日月曜日
しばらくマンハッタンにこもっていたので、気分転換にDia Beaconに行くことにする。セントラル・パークからメトロ・ノースに乗って約1時間。ハドソン・リバーが車窓いっぱいに広がり、マンハッタンの喧噪が嘘のように深い自然が窓の外を流れていく。あいにくの曇り空だったけど、結構開放感に浸ることが出来る。やはり自然は良い。
Dia Beaconは現代美術専門の美術館。1929年に建てられた工場の建物をそのまま美術館にした施設。広大な空間にコンテンポラリーアートの作品が無造作に並べられている。日本ではあまり似た例を思いつかないけれど、パリのパレ・ド・東京と同じような感じ。ただし、Dia Beaconの方は、整然としていて、あまりパレ・ド・東京のような猥雑感はない。まあ、郊外の美術館だからそうなるのは当然なんだけど。
Dia Beacon正面。工場跡の感じがわかってもらえるだろうか。
展示されている作品は、さすがにコンテンポラリー・アートの名品をそろえていて見応えがある。しかも、天井もフロアも広くて、とても贅沢に展示されている。思わず見入ってしまう。
例えば、以前、このブログでも紹介したルイス・ブルジョワの女郎蜘蛛シリーズ。部屋全体に広がる感じで展示されていて、作品の持つ威圧感を実感できる。やはり、ルイス・ブルジョワと言えば、このシリーズだと思う。しかも、Dia Beaconでは、本当に作品の中に入り込む感じで見ることが出来るので、作品の手触りまで実感できる。なかなか良い。
ルイス・ブルジョワの女郎蜘蛛の作品。
順不同に、気に入った作品を上げていくと、まずはヨーゼフ・ボイスのインスタレーション。この作品、実はビデオ作品で、ボイスが、毛布と杖だけで、野生のコヨーテと一緒に部屋の中で数日間過ごすのをビデオで撮影したものが本来の作品。その際に使用したオブジェをインスタレーションとして展示しているのがこの作品になる。僕は、MOMAでオリジナルのビデオ作品を観たことがあるけれど、とてもユニークな作品だった。野生のコヨーテは、やはり野生だけあって、隙があればボイスの毛布にかみついたり、結構凶暴である。ボイスは、それを杖で脅したり、毛布にくるまったりしてやり過ごしていくのだけど、観ているだけで、面白い。パフォーマンス作家としてのボイスの面目躍如となる作品だと思う。思えば、ボイスは、エコロジー的な思想の実践者の先駆けであり、また抜群の感性と創造力でパフォーマンスの面白さを拡大させた希有な才能だった。コヨーテはまた、カルロス・カスタネダが描いたように、ネイティブ・アメリカンのスピリチャルな叡智と交感することのできるシンボルでもあった。
ボイスのインスタレーション作品。
もちろん、リチャード・セラの巨大な作品群も観ることが出来る。リチャード・セラの作品は、個人的には屋外で観るよりも屋内で見る方がよいのではないかというのが僕の実感である。何というか、屋外だと、ただの壁にしか見えないことがあるんだけど、屋内に置かれると、その壁の質感とか、壁の中に入ったときの空間感覚が研ぎ澄まされるからなのかもしれない。それほどインパクトがあるわけではないけれど、それぞれの壁の錆の色や質感の微妙な差異をじっくり眺めていると、不思議な感覚にとらわれるような気がする。
リチャード・セラの作品
もちろん、コンテンポラリーと言えば、アンディ・ウォーホールは外せない。Dia Beaconに展示されているのは、「Shadows」と言う作品。ウォーホールだから、当然のようにスクリーン・トーンを使っているんだけど、この作品は、フランツ・クラインの作品のような抽象画を様々なタッチと配色で並べたもの。ウォーホールらしい諧謔精神で、前の世代の抽象表現主義のパロディーを試みているように見えるけれど、一つ一つの作品の配色とか、キャンバスのぼかし方などを丹念に観ていると、単純に同じ作品のバリエーションを並べることで抽象表現主義の作品のポップ化を図っただけとは思えない、こだわりが感じられる。本当に、ウォーホールという人は才能溢れる人だったんだと実感する。
アンディ・ウォーホール作品
マイケル・ヘイザーの「東西南北」も、Dia Beaconならではの巨大な作品。床に、丸と四角の巨大な穴を開けただけの作品なんだけど、その大きさと、ある種のシンメトリー感覚がとても心地よい。これは、本当に、Dia Beaconのだだっ広い空間でないと良さがわからないと思う。
マイケル・ヘイザー作品
こうやって紹介していくと本当にきりがないんだけど、もう一つ紹介したいのは、ブルース・ナウマンの「マッピング・ザ・スタディオ」という作品。地下の展示室の一つをまるまる使った作品なんだけど、四つの壁に廃墟とおぼしき空間の映像が映し出され、暗闇の中に、椅子が無造作に置かれていると言う作品。ありがちと言えばありがちな作品なんだけど、ビデオ映像のざらついた感じと部屋の無機質な広がりがとてもうまく調和していて気持ちよかった。
ブルース・ナウマン作品
ちなみに、マンハッタンからならDia Beaconは十分日帰りが可能です。コンテンポラリー・アートをのんびり観て、できればハドソン川のほとりを散策して、帰りには、セントラル・ステーションのオイスター・バーでワインと牡蠣のささやかな贅沢を楽しめば、結構充実した休日を過ごせます。お勧めです。
Diaのメンバーシップ申し込みパンフレット。さて、あなたは、ここに紹介された作品のうち、何人の作家を当てることが出来ますか。