スピリチャルでアートな日々、時々読書 NY編
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ドリーム・ヨガ:夢を使った修行法
2009年1月10日土曜日
週末に、ゾクチェン・コミュニティのドリーム・ヨガ・ワークショップに参加する。講師は、マイケル・カッツ氏。日本では、ナムカイ・ノルブ著「夢の修行:チベット仏教の叡智」(法蔵館)の英語版編者としてクレジットされているが、実際に、ナムカイ・ノルプ師の夢の修行に関するティーチングをまとめ、「Dream Yoga and the Practice」という本にまとめたのは彼だから、著者と言っても差し支えないと思う。特に、「夢の修行」にも訳されている「序文」は、非常に充実していて、これを読むだけで、ある程度、ゾクチェンの基本的な考え方とそこにおける「ドリーム・ヨガ」の位置づけが理解できるようになっているのはありがたい。
そのマイケル・カッツが直接ドリーム・ヨガのワークショップをするのだから、さぞたくさんの人が参加しているだろう・・・・と期待して行ったのだが、参加者は私を入れてわずか3名。。。。ゾクチェン・コミュニティ・ニューヨークは大丈夫かな。。。。という思いを新たにしました。何というか、あまりやる気が感じられないんですよね。でも、だから僕にとっては居心地が良いんですけど。
とまれ、ドリーム・ヨガのワークショップです。まず、マイケルがドリーム・ヨガの基本的な考え方について説明します。詳しくは、「夢の修行」を読んでもらうことにして、とりあえず、エッセンスだけをお伝えすると、ドリーム・ヨガとは、夢を夢として認識し、これを自在に操ることによって、夢を見ながら修行を行い、ゾクチェンが目標とするリクパの境地に至る、という方法です。簡単なようですが、ドリーム・ヨガの修行に入るにはまず夢を夢として認識する明晰夢の境地に入らなければなりません。これがとても難しいのです。入眠前のプラクティスがあるので簡単に紹介しておきますが、これをやったからと言って、必ずしもすぐに明晰夢を見ることが出来るわけではない点にくれぐれもご注意ください。それから、夢を操作し始めると、かなり現実世界に影響が出てきます。具体的には、とにかく昼間起きているときにも頭がボーッとします。また、修行が進むにつれて幻覚をみるような状態にも入ります。普通の社会人生活を営みながらドリーム・ヨガを行うのはかなりの覚悟が必要だということをきちんと認識してください。できれば、マイケルのような講師が主宰する10日から2週間程度のリトリートに参加して集中的に修習した方がよいでしょう。
ドリーム・ヨガを行うための入眠前のプラクティス
1.ゾクチェンの基本である呼吸による身体の浄化を行う。
2.胸に白いァ字を観想しつつ、アーと唱え、心身をリラックスさせる。
3.胸のア字をフーム字に変え、フームと唱える。これにより、胸のフーム字から光が溢れだし、全身がこの光に包まれて外部の世界から防御されたと観想する。
4.アーと唱えつつ、中央脈管の下部から頭頂に向けて白いア字が上昇して行くと観想する。
5.これに伴って、各チャクラが溶けてそのプラーナが上部のチャクラに入っていくと観想する。最後に、頭頂に集まったプラーナを空中に放出する。
6.全身が空になったと観想する。
7.身体を前に折り曲げて、息をゆっくりとすべて吐き出す。
(以上のプロセスを三回繰り返す。)
この方法は、心身をリラックスさせ、浄化して、ドリーム・ヨガにはいるための一つの方法である。ただ、方法は様々にあって、単純に額に白い輪を観想しても良いし、胸に白いア字を観想するだけでもよい。場合によっては、喉に赤いア字を観想することもある。詳しくは、「夢の修行」を参照して欲しい。要は、夢を見ているときでも、自分は夢を見ているのだという意識をはっきりと持ち、夢をコントロールすることができるようになればよいのである。
では、ドリーム・ヨガとは何かというと、この明晰夢の中で、ゾクチェンが目標とするリクパの覚醒状態を獲得し、これを保持することにある。さらに、夢におけるリクパの覚醒状態を起きているときにも保持できるようになればかなり上級レベルに入ることになる。
マイケルの説明で面白かったのは、この上級レベルの修行に入ったときに、夢と現実をどのように区別するかという方法である。上級レベルにはいると、自分が今夢を見ているのか、それとも起きて日常生活にいるのかわからなくなるぐらい、夢がリアルになると言う。その結果、自分が今、夢を見ているのか、それとも起きて日常世界にいるのか、区別がつかなくなってしまう。これは考えてみると怖い事態である。下手をすると、狂気に陥る恐れもある。では、夢と日常を区別するには、どうすればよいのだろうか。
マイケルの説明によれば、その方法は幾つかある。例えば、鏡の中をのぞき込むというのが一つの方法である。起きていれば、現在の自分の姿が映るが、夢の中の場合、より若かったり年を取っていたり違う身なりだったりするので、自分が夢の中にいることがわかる。あるいは、本でも新聞でも良いのでテキストを読むという方法もある。一度テキストを読み、いったんテキストから視線を外して再び同じテキストに目をやったときに、そのテキストの内容が変わっていなければ現実、変わっていれば夢の世界と言うことである。いずれにせよ、明晰夢の世界はかなりルイス・キャロル的な非日常世界である。夢の修行の怖さが少しわかってもらえただろうか。
ドリーム・ヨガのワークショップの最後は、実際に、夢を見るという実践を行う。
まず、マイケルを囲む形で円形に座り、はじめに紹介した「入眠前のプラクティス」を行う。それから、しばらく空性の状態にとどまる。その際、マイケルが深い集中に入って、回りに座っている参加者全員にヴァイブレーションを送ってくれる。感覚的には、暖かい波動が彼の方から伝わってきて全身が包まれる感じ。なかなか気持ちが良い。その後、マイケルの指示に従って、それぞれが横たわり、胸にア字を観想しつつ、心身を脱力させる。照明が落とされ、マイケルの催眠術のようなゆったりした声を聞きながら睡眠に入る。しばらくその状態にとどまり、それから、照明が戻され、マイケルの指示により、目を覚ます。
これがドリーム・ヨガの実践(但し体験版)である。終了後、マイケルが参加者に「どんな夢を見た?」と質問する。残念ながら、僕は全く夢を見なかった。そもそも、自分が寝たのかどうかも定かではない。ただ、横になって照明が暗くなってから、再び照明が戻されるまで、僕の感覚ではほんの5分ぐらいしか経っていなかったという感じだったのだが、マイケルに確認したところ、30分は横になっていたと言うから、おそらく意識は失っていたのだろう。他の参加者は、こんなイメージを見た、と回答していたので、おそらく彼らはドリーム・ヨガを実践できたのだと思う。僕は、以前にも一度、アムリト・ヨガで同じようなプラクティスをして、その時も同じように、他の人たちがいろいろなビジョンを見たのに僕だけは全く何も見なかったという経験をしている。どうも、感性が鈍いのか、この睡眠系のヨガとは相性が悪いようだ。
ちなみに、マイケルは、ぱっと見た感じは、いかついプロレスラーみたいだけど、話すととても細やかだし、ゾクチェンに限定されず様々な思想・宗教書に通じていて博識だし、修行も真摯に行っていて、とても好感が持てました。5月8日から10日に日本で開催される予定のナムカイ・ノルブ師のリトリートに行くかもしれないと言っていたので、もしかしたらドリーム・ヨガの紹介があるかもしれません。ご期待ください。
ドリーム・ヨガを解説しているマイケル・カッツ氏
「夢の修行」日本語版