スピリチャルでアートな日々、時々読書 NY編

 
 

 ニューヨークは不思議な街だ。グローバルな経済の中心地として、マンハッタンには巨大なビルが建ち並んでいるけれど、ちょっと視線を街並みに戻せば、いろいろな人たちがそれぞれコミュニティを営んでいる。当然のように、それぞれのコミュニティは宗教的な核を持っている。ニューヨークほど、様々な宗教コミュニティが平和的に共存している街はないのではないだろうか。ざっと見ただけでも、ヒンドゥー教、道教、キリスト教、仏教、ユダヤ教がちゃんとそろっている。仏教は、チベット仏教、禅、神道、ヴィッパサナーなどなど。イスラムもシーア派、スンニ派、スーフィーがある。キリスト教は各派がそろっていることは言うまでもない。これ以外にも、神智学、人智学、バハイ教、ネイティブアメリカン・・・・。ヨガ教室は数知れず、新宗教も様々だ。ニューヨークという街は、実はスピリチャリティの中心地でもある。


 言うまでもなく、ニューヨークはアートの中心地でもある。ブロードウェイ、カーネギーホール、リンカーンセンター、MOMA、メトロポリタン美術館・・・今さら言うまでもなく多くのアートムーブメントがニューヨークで生まれ、世界中に発信されていった。こうしたアーチストの中には、宗教と深い関わりを持った人たちも多い。例えば、ジョン・ケージは、鈴木大拙がコロンビア大学で行った禅の講義に出席していたという。彼の偶然性の音楽は禅の発想を根底に持ち、作曲は例えば易の占いを使うなど東洋の叡智に深く関わっていた。音楽家で言えば、サッティーヤグラハを作曲したフィリップ・グラスやチベット仏教に深い関心を持っているローリー・アンダーソンもこうしたスピリチャリティを目指したグループに入れることが出来るだろう。コンテンポラリー・アートでは、ネイティブ・アメリカンに深い関心を寄せたジャクソン・ポラック、ユダヤ教をベースに抽象を通じて超越的存在に迫ろうとしたマーク・ロスコ、バハイ教の教えを絵画に実践したマーク・トビィーなどの画家達がいる。ニューヨークという街の持つ力がこれらアーチスト達のスピリチャルな想像力を刺激したのではないだろうか。


 これから数年間、ニューヨークで生活しながら、アートとスピリチャリティについて感じたことや考えたことを綴っていきたいと思う。テーマの中心は、アートとチベット仏教になるが、音楽や読書も取り上げたい。時には、ネイティブ・アメリカンのことも話題にしたいと思っている。これらは、僕が今まで関心を持ち、そしてこれからも関心を持ち続けるだろう分野である。ニューヨークにいてこのサイトを立ち上げようと考えている今、自分の中で、こういう様々な分野が何か一つのかたちを持ち始めているような予感がする。それがどのようなものかはわからないし、方向性すら今はない。でも、このサイトを運営し、文章を書き連ねていくうちに何かが徐々に明らかになっていくような予感だけは確実にある。それは、たぶん、アーチストやスピリチャル・リーダー達が彼らの活動を通じて到達しようとした超越性に関わっているのかもしれない。ともかく、まずは書き始めることにしよう。道は常にそこにある。

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